クリニックトラブル事例6 残業代抑制

残業代を抑制したいと考える事業主様は少なくないと思います。労務管理について従業員に任せていて、適切に管理できていない場合、「残業は必要がなければしないように」と指示したとしても恐らくほとんど効果はないか、一時的に効果があっても元に戻ると思います。これは従業員が給与を稼ぐために意図的に残業をしていることもありますし、従業員が今までの業務のやり方や業務内容を維持しながら残業時間を削減することが本当にできないというケースもあります。それらの背景を無視して残業時間を一方的に減らすという指示では効果が現れにくいわけです。

参考事例です。

月に残業が40時間以上あり、長年に渡り従業員が退勤時間をコントロールしているクリニック様でした(残業時間を従業員がコントロールできている状況です。)。

改善を試み、残業は事業主の命令で実施するものなので、抑制するように何度か指導をしました。

それでも多少の改善はあるものの、思うようには改善しませんでした。

そこで、以下の取り組みをしました。

①勤怠の管理のルールを文書で作成

・朝は所定の労働時間以前には勤務しないこと、それ以前に打刻しても所定の労働時間以降しか給与計算はしないこと。

・退勤については、最終診療終了後20分以降の残業はどうしてもその日に行う理由があることを明記した申請をしなければ、承認はしないし、承認しない残業は給与も支払わない。

②上記を文書で通知して説明をしました。

→最初は残業の申請書が出てきました。

理由を見てみるとどうしてもその日にやらなければならない理由はありませんでしたので、全部拒否して、残業をしなくても済む方法(分担や業務の改善、いらない業務の削除など)を従業員同士で考えさせたり、具体的にどうすればよいかや分担するように指導を継続しました。

結果として、診療終了後20分以上の残業は抑制されほとんどないような状況が続いています。

 

簡単に記載しましたが、取り組み当初からスムーズに進んだわけではなく、従業員から、どうしてもこの業務は必要だ、この業務はこの時間にやらなければならないなどという反論もありました。これらの反論は、残業をしないで済む体制を作るというゴールを意識していないために起こるのだと思います。ですので、これら反論に対して解決策を1つ1つ説明するよりも、残業をしなくて済む方法を従業員に考えさせるように指導することが重要だと考えています。

まずは一人一人の業務を具体的に洗い出すことから始め、それから省くことはできないのか、やり方を変えられないか、業務を分担できないか、暇な時間にできることはないか、など検討していくことが大切だといます。

このプロセスはある程度時間がかかりますし、労力が必要かと思いますが、従業員の行動が変わり結果はでます。行動が変わると少しずつ考え方も変わるものです。

中途半端に進めるのではなく、事業主の絶対的に進めるという意思や覚悟を持って進めていただけるとよいと思います。